障がい者と共に歩み自立を目指す「太陽の家」が実現した真のバリアフリー
別府のワクワク企業を大発見!地元企業の仕事内容、経営者・社員の魅力、就職情報を学生目線でご紹介します。さあ、別府で働こう!
別府に暮らす学生目線で企業を訪問し、仕事内容ややりがいなど、知られざる魅力を発掘する企画「別府でJOBJOB」。
第二回目は“障がいを持つ人に優しい街・別府”の象徴ともいえる「社会福祉法人 太陽の家」にお邪魔しました。
「太陽の家」という名前は知っているものの、あまりよく知らない……。どんな人が何をしているのか?その中身に、別府大学文学部3回生・早田龍世が迫ります!
目次
障がいを特別扱いせず地域に溶け込む
太陽の家は就労支援や生活支援をしながら、障がい者の自立を目標に掲げ活動している施設です。
創設は1965年(昭和40年)。医師・中村裕(なかむら・ゆたか)博士によって設立されました。
職員の皆さんは、社会福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、作業療法士など、多様な福祉・医療専門職の方々が働かれていらっしゃいます。
今回の取材、まずはスーパーマーケットの「サンストア」に行ってみました。車いすの人でも働きやすく利用しやすいように、可動式のレジが導入され、車いす同士がすれ違える通路幅になっています。
また、商品テキストの表示が大きかったり、戸棚が低かったり、多目的トイレがふたつも設置されていたり、細かい配慮がたくさんで驚き!
太陽の家にあるカフェや温泉、体育館やスポーツ施設は地域の方も利用可能で、障がいのある人もない人も区別がありません。障がい者への理解が浅い地域では、障がい者へのタクシー乗車拒否があったり、車いすで通るとヒソヒソ話をされたりすることがあるようですが、別府にはないそうです。
別府は障がいに対する理解が深く、特に「太陽の家」は地域に溶け込んでおり「障がいを持っているから」と特別視されず、みんなが生活しやすい環境が整っていました。
企業理念と自立に向けた活動
早田「企業理念について教えてください」。
服部さん「No Charity 障がい者を保護するのではなく but a Chance 自立するための機会を与える」といった意味が込められています。障がいがあっても働く能力は関係なく、仕事や生活の場でユニバーサルな環境づくりに努めており、あくまで自立を支援しています。ロゴには太陽と麦が使われており、麦のように踏まれてもぐんぐん成長することをめざしています。
できないことをやってあげるのでは、その人のためにはならない。社会に出るチャンスを与えて自立に繋げる、それが根幹にあります」。
今回、取材させていただいた服部さん(左)、カルキ ビラムさん(中)、宇都宮さん(右)
カルキさん「その昔、日本で障がい者スポーツをしている9割の人が仕事を持っていませんでした。一方欧米では、ほとんどの人が仕事を持っていたといいます。ロゴに刻まれた『Japan Sun Industries』には、障がい者が仕事を持つ海外の常識を日本にも広めたいという思いがありました。複数形になっているのはこういった施設がどんどん広がっていく願いを込めているからです。英語の理念や名前を見るだけで、僕のような外国人や留学生にも、障がい者を支援する施設と理解できます」。
理念だけでなく、ロゴにも深い意味があり、創設者の思いが込められていることに感動!
お話いただいたカルキビラムさんは、ネパール出身。APU(立命館アジア太平洋大学)の卒業生で日本在住7年目です。
カルキさん「元々IT関連の職に就こうと日本にやってきましたが、東京でアルバイトをしたけれど、都会の生活が合わなかったんです。そんな中、太陽の家が主催するキャンプなどに参加して福祉に興味を持ち、人も動物も優しい別府で就職しようと決意しました」。
別府が地元の僕としては、とても嬉しいお言葉です!
一般の方も大歓迎!太陽の家の様々な取り組み
先に紹介した「サンストア」をはじめ、それぞれの施設では細やかな工夫がされていました。一般の人も利用できるカフェ(ランチは500円!)やスーパーマーケット、温泉などは、地域に溶け込んでいます。
また、オムロン、ソニー、ホンダ、三菱商事など日本を代表する共同出資企業から様々な仕事提供があります。作業場も種類も多く、利用者さんのニーズに応えやすいようになっています。
【本館】
建物自体にも特徴があります。本館は総務経理、B型事業所を利用している人の寮になっていて、緊急時に車いすでも避難できるように、外には非常用のスロープが設置されていました。初めて見る巨大なスロープはすごい!圧巻!!
施設の周りには塀がなく、地域の方にいつでも利用しても良い雰囲気作りをしています。
【歴史資料館】
太陽の家の歴史を展示しています。障がい者スポーツのメダルやイベントごとに取られた写真など、各事業所で作ったものも展示。利用者さん手作りの革刺繍小物や、イラスト付きマグネット、温泉の素なども販売中!
【カフェ(食堂)】
机は低く、車いすのままでも利用できるように所々イスが置いてありません。移動しやすいようにスペースは広めにとられており、食事補助の自助具も完備。介護するのではなく、自立を理念として掲げている太陽の家ならではの光景。
障がいがあっても経営者になれる!
住みやすく、働きやすい「太陽の家」。働いている人も利用者も、障がいの有無にかかわらず人間関係が良く、協力的な人が多いなーと感動しました。
みんなが平等で障がいを感じない・感じさせない、障がい者との関わりができるところが、他の事業体にはないキラキラしたポイント。
太陽の家には様々な業務、そして障がい者スポーツがあり、利用者さんの希望に沿ったやりたいことを提供していました。障がいを持っていても、管理職や経営者になる方もいるそうです。
障がいのある方の「就職したい」という思いを達成した後も、「経営者や管理職につける」といった目標を与えられる環境は本当にすごい!!
【就活情報】こんな人材が欲しい!
早田「求める人材や、心構えはありますか?」
宇都宮さん「特にコレといってないんですが……強いて言うなら普通の人、環境に適応できる人。あとは利用者さんの自立のためにも要望などを時に断る勇気を持っている人ですね」。
早田「やりすぎもよくない・・・ということなんですね」。
服部さん:うちは福祉の専門職以外でも働けます。共同出資企業などからは工学系の募集もあり、今年度は高専からも採用していました。
宇都宮さん:様々な部署があり、希望を出せば異動も可能です。私は、今の総務にうつってくる前は、太陽の家で介護職をしていたんですよ。
早田:介護の仕事でやりがいを感じるのはどんな時でしたか?
宇都宮さん:利用者さんと直接関わり、彼らが出来なかったことを少しでも出来るようになると、嬉しくなりやりがいを感じましたね。総務へ異動してからは、「太陽の家」に対する理解が深まり自分が働いているのに何も知らなかったことを痛感しました。様々な部署で違った経験が出来るので、豊富な知識に繋がっています。
「太陽の家」では介護など利用者さんと直接的に関わって支援したり、管理職として会社の経営に携わったりと、それぞれの部署で経験したことが活かされています。様々なやりがいのある仕事が経験できそうな点に、大きな魅力を感じました。
まとめ
今回お邪魔した「太陽の家」。名前はよく耳にするし、サンストアも利用しますが、障がい者の方のために様々な工夫があったことに驚きました。「太陽の家」周辺の地域全体が福祉施設のようで、地域に溶け込んで差別偏見が感じられず、住みやすそうだと思いました。「太陽の家」が長年、地域に根差して取り組んできた結果だと考えると、改めてその凄さに気づかされた取材です。
福祉施設であり、別府のまちづくりのような活動がとても素敵でした!
私は、福祉のことを専門に学び、将来もその道に進もうと思っていますが、貴重な経験・学びになりました。
会社データ
取材先:社会福祉法人 太陽の家
住所:大分県別府市大字内竈(うちかまど)1393番2
電話:0977-66-0277
ウェブサイト:http://www.taiyonoie.or.jp/
Facebook:https://www.facebook.com/taiyonoie/
取材&編集:早田龍世(別府大学文学部3回生)
※「別府でJOB JOB」に込めた意味
「JOB」は、仕事、職、任務、役目などという意味があります。そして、別府といえば真っ先にイメージするのが温泉。温泉につかると「ジャブジャブ」と音がしますが、別府のワークスタイルを温泉のように学生(若者)に浴びてもらいたい、という意味を込めています。